ねこのみどり(第二校)
ぼくはねこ。「保護猫ぐるぐる」というところにいる。ぼくはどんな大人の猫になるんだろうな。
ある日、ぼくは選ばれた。
「あなたを気に入った人が、飼いたいというの。大丈夫?いいこにできる?」
「うん。いいこでいるよ。まかせてニャ」
猫はもらわれていきました。
可愛いおうちだった。飼い主のママはとても優しい目をした人だった。
毎日、きちんと同じ時間にごはんをくれて、とても清潔にしてくれた。
そして、そこにはもう一匹。「マネ」という猫がいた。
ママは病気だった。しゅじゅつをしてとても良くなったそうだけど、
「また病気になったらどうしよう」という不安が消えませんでした。
猫は「みどりちゃん」と名付けられた。
目の色が緑色だったから。
マネの名前は黒猫だったかららしいけど意味は分からない。
マネはみどりちゃんに行った「お母さんはずっと猫を飼い続けているの。あたしで4匹目。でもお母さんは2匹までしか飼わないと決めていて、半年前に前の猫が天国へ行った時、お母さんは喪が明けてからあなたを引き取りにいったんだよ。今までの猫からわたしはママのお話をたくさん聞いたわ。死んじゃった猫たちも、みんな繋がってママを守っているんだよ」
マネは続けました。
「お母さんの病気は治ったらしいんだけど、まだちょっと苦しいらしいの。私たちをもふもふしたり、顔を私のお腹にくっつけてしゅーって吸うことで苦しみも悲しみも柔らぐんだよ。涙もくっつくよ。私たちは自由だけど、ひとつだけお仕事があるの。お母さんのこころを癒すこと。
みどりちゃんは了解しました。
ぼくの毛皮をいっぱい吸わせてあげるよ。
お母さんはみどりちゃんをいっぱい吸いました。
ある日、ママはどこからか綺麗な緑色の石を持ってきました。
「この緑色の石きれいね。エメラルドみたい」
ママはみどりちゃんの首輪にエメラルドみたいな石をはめました。
するとどうでしょう。みどりちゃんに変化が訪れました。
「人間の体の中が見える。神経といういろんな糸が見える。」
みどりちゃんは、わけがわからないけれど、ママの体をじーっと見て、
「これとこれかな?」と、交感神経と副交感神経という糸を整えました。
そして、絡まってるときは、ちょいちょいと直してあげていました。
でも、みどりちゃんがそのちからを使うと、みどりちゃんは自分の寿命が短くなるのを感じました。
でも、みどりちゃんはそれでよかったのです。
ママは元気になって、子どもを産みました。
「人間の子供ってなんて大変なんだろう」みどりちゃんは協力しました。
ママはマネも、みどりも、子どももみんな平等に愛して育ててくれました。
ママは一生懸命だけど、パパもできたので幸せそうでした。
そうして何年も幸せな日々が続きました。
マネに寿命がきました。
マネは、ママの腕の中で安らかに眠りました。
家族はマネをお風呂に入れて綺麗にしてブラッシングしてふわふわの毛に戻しました。
お花でいっぱいにして、みんなで撫でて「ありがとう、マネ」「大好きだよ」。
マネは天国へ行く途中、その言葉を何度も聞いてとっても幸せでした。
ママは、マネが死んだことでちょっとココロが不安定になっていました。
みどりちゃんはママのココロを癒しました。神経を整えたりしました。
ママが辛いとき、パパがうまくいかないとき、子供が泣いているとき、みどりちゃんはいつもみんなを癒しました。
そろそろ、緑ちゃんの寿命も近づいてきました。
ある日、家のドアが少し開いていました。
みどりちゃんはチョイとドアを開けて、外へ出ました。
「死ぬところを見せたくないんだ。ぼくは最後まで癒す猫でいたいんだ」
雪が降っていました。
ママは緑ちゃんを必死で探しました。何日も探しました。
みぞれ雪の道に、みどりちゃんの首輪がありました。石が投げられた跡もありました。
まわりにはカラスもいっぱいいました。
エメラルドはありませんでした。
ママは首輪を持ち帰って、泣きました。
「みどり、ごめんね。最後撫でてあげられなくて。あったかくしてあげられなくて。寒かったよね。
ママ知ってたのよ。あなたが力を尽くしてみんなを癒していたこと。みどりがいたからこの子が生まれたのよ。
みどりのおかげでこの子を安心して育てられたのよ。
ごめんね、みどり。あなたにばかり頼って。ごめんね、ごめんね。ごめんね。抱きしめたいよ。ごめんね」
ママから飼い猫がいなくなりました。
ある日、公園で子供は滑り台からよろけて反対側の階段側にゴロゴロと落ちて頭を打ちました。
近くに、緑色の石を転がして遊んでいる子猫がいました。
子猫は子供にすりよりました。
エメラルドがパキっと割れた。緑色の結晶が空に舞いあがる。
子供は無事でした。どこも痛くありませんでした。
エメラルドの力は完全に失われました。
黄色の目をした子猫は、空を見上げ、猫型の雲を眺めてうなづきました。
「ぼくを飼ってくれませんか? 能力はありません」
「もちろんよ!」「もちろん!もちろん!」
親子は喜んで子猫を抱いておうちに帰りました。
みどりの想いは繋がれました。
ただひとつ。「愛しているよ」。
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